日本の台所「豊洲市場」2018年築地から移転した豊洲市場には、水産約500社・青果約100社の仲卸会社が存在します。「良い仕入れ・良い業者」を紹介する本サイトでは、豊洲市場で熱い想いを持って働く会社様にインタビューを行っております。

 

第21弾は、大手ホテルや飲食店(寿司屋・天ぷら屋)に天然の穴子や鮮魚を納める「山五商店」の山崎浩二代表取締社長と山崎大輔専務取締役に話を伺いました。天ぷら鮮魚専門店として業界を盛り上げる山五商店は、豊洲市場のみならず、築地魚河岸にも店舗を持つ。魚河岸には山五の代名詞ともなる穴子を目当てに来店する人が、インタビュー中もひっきりなし。

天ぷら鮮魚を専門的に取り扱い初めた理由から、築地魚河岸の役割、そしてこれからの事も赤裸々に語って頂きました。

 


シンプルな天丼・天ぷらの魅力


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本日はお時間頂き、ありがとうございます。

早速ですが、山五さんの歴史を教えてください。

 

山崎社長 以下:山崎(社)

父が戦争から帰ってきてからなので、恐らく70年弱くらいでしょうか。浦安出身なんですが、最初は築地市場で魚屋をしていたんです。浦安で取れた鮮魚を築地で売ったり、仲卸から購入して販売するスタイルでした。

戦後、市場を拡大させるというタイミングで、出店の募集があり、その時に兄弟ごとに取り扱う商品を変えて出店したようです。ちなみに、父は「山崎五郎」で、この名前から「山五」と命名されたんですよ。

 

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それなるほど、それがきっかけだったのですね!

でも、いわゆる華やかに見えるマグロなどではなく、お父様はなぜ天ぷら専門の鮮魚になったのですか?

 

山崎(社)

父が小さい時に、祖父と浦安の天丼屋さんに頻繁に行っていたときの話ですが、祖父が天丼の天ぷら部分を全部食べてしまい、父は下のご飯しか食べれなかったと聞きました。そんな幼少期の経験が、逆に天ぷらを好きになったきっかけだったようなんです。

 

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タレがかかったご飯って美味しいですが、さすがに上の天ぷらが美味しい部分ですもんね(笑)

社長が市場に入られてのは、何歳くらいの時なんでしょうか?また、当時の取引先はどのようなお客様がいらっしゃったんですか?

 

山崎(社)

昭和の頃は、家業を継ぐものだと思っていて、自然に市場の仕事をしてました。

昔と今では、お客様層は変わってないなく、天ぷら屋や寿司屋、料亭や大手ホテルです。

天ぷら屋は老舗なイメージもありますが、近代的な方法で提供をしているお店も多いです。中には魚を取り扱ってないお店もあって、野菜やお肉、キャビアなどを使って“映え”を狙うのも商売ですよね。

新しい天ぷらは、見てて楽しいし美味しいんですが、僕としては昔ならではの、きす・めごち・穴子を使った天ぷらの方が『飽き』がないと思うんです。シンプルな天ぷらは、お代わりしたい!って思うほどだと思っています。


1つ1つの出会いが運命


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シンプル・イズ・ベストですね!

納め先に幅があると思うのですが、ロットや求められる質などはどのように対応されていらっしゃるのですか?

 

山崎(社)

飲食店さんや納め屋さんなどから、当日中に200本ください!といった注文に対応は出来ないので、お客様には事前におっしゃって頂くようにしています。むしろ、長い付き合いのお客様が多いので、「今週は状況が良くないので来週まで待った方が良いかもしれません。」や「明日より、今日の方が良いかもしれません。」など情報提供するようにしています。

また、最近は技術が進歩してきたので、瞬間冷凍で‐60℃にし、真空パックしてサンプルを出したりすることも出来ます。昭和の時代には無かった技術ですね。

 

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山五さんの商品を試してみたい!発注したい!というお客様にはどのようなアプローチをされるのですか?

 

山崎(社)

市場の人間って、遠い昔の取引先に金銭関係で裏切られてしまったりしたことがあると、なかなか信用できなく、お付き合いを始める時に消極的になってしまったりするんです。

 

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それは多くの仲卸さんからも聞いたことがります。

 

山崎(社)

はい。しかし私は、真摯に・誠実にお客様と向き合うことから始めています。1つ1つの出会いが「運命」だと思っているので、ご連絡頂いたお客様に関しては、まずはお付き合いを始めてみるんです。あくまでも人と人との商売、『相対』ありきなので、なんでもかんでも不信感から入ることはしていないです。そういった想いでいると、本気で仕入れを検討している方が来て下さるんですよ。


東京湾から消えた穴子


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なるほど、そんな方から仕入れの相談が来た時、必ず聞く質問はありますか?

 

山崎(社)

魚は生き物なので、まずは市場に来ていただくようにお願いしています。魚の種類も沢山ありますし、大きさも違います。

そこからは、当日来る便の時間帯や予算など、具体的な話を聞きますね。また、今の時期の魚の状況などもお伝えしています。

 

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熱い思いが伝わってきます!穴子のメキキって、どのようなポイントがあるんでしょうか?

 

山崎(社)

こればっかりは難しいですね。毎日見てると、分かるんですよね。身をかじって味を確かめることが出来ないですが、やはり見た目が綺麗だと中身もしっかりしている事が多いです。色がキレイというのもありますが、肥えていて脂がのっているかどうかということですね。正直、魚は産卵期の旬があるので、時期が良い時はどれを取っても美味しいんです。逆に、僕たちは産卵期ではない時に、どうやってそれを見分けるか、ということですね。

現状、東京湾にはほとんどいなくなってしまいました。人間の環境汚染ですね。現在は韓国や九州のその間に多く生存しています。また、東京湾を通り過ぎて、北陸近くでも収穫することができます。昔なら、冷凍技術もないので、東京湾の物が多かったですが、今は便利で、鮮度落ちず、各地からここ築地・豊洲に運ぶことが出来てるんです。

 

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環境の変化と同時に、技術にも変化があるということですね!

最近来たお客様のエピソードを教えていただけますか?

 

山崎(社)

弟子入りしていた若い方が、ご自身で出店をされる方もいらっしゃいます。また、現在納め先の銀座の天ぷら屋さんで天ぷらを食べて、美味しかったので、どこで仕入れているかを聞き、魚河岸に来て下さった方もいらっしゃいました。よく聞くと、地方で出店したいということです。


築地魚河岸の役割


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先ほどから絶えず一般のお客様も来ているこの魚河岸の店舗ですが、豊洲から築地に移転されるとき、築地魚河岸に店舗を残すと決めたご理由と、その決意を教えてください。

 

山崎(社)

実は最初、築地魚河岸にお店を残す想いは無かったんです。天ぷら業界って、大きいわけではないですし、店舗もこじんまり経営していたので、築地と豊洲の両方に店を構える必要ってあるのかなと。しかし、お客様の事を考えると、築地の方が便利ですし、万が一失敗してしまったとしても、加工場にしようかなとも色々考えてました。

 

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そこからこんなに山五さんの穴子をめがけて来て下さるお客様が多くなったのはどのような事をされたんでしょうか?

 

山崎(社)

なんと言っても親方(店長)の存在です。もともと飲食の有名店で働かれていた親方が、本格的な煮穴子を店前で販売し、それ目当てに来て下さる方が多くなってきたんです。また、お寿司も、前日までに注文いただければ魚河岸で受け取れるというスタイルも構築出来てきました。お客様との距離が近いからこそできることですね。

【店長提供写真】

 

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この築地魚河岸も最初は出店を計画していなかったとはいえ、今はとっても良い役目をしてますね!ちなみに・・・某大手回転すしチェーンとの穴子コラボなんかもされてますよね?!どのようなきっかけだったのか、気になります!

 

山崎専務 以下:山崎(専)

穴子専門って所に興味を抱いてくださったのかもしれません。あんなに大きくなるとは思ってなかったんですけどね(笑)

 

FC

個人的にもスシロー好きなので、またやってほしいです!それと、クラウドファンディングなども積極的に行ってますよね?どのようなきっかけだったのでしょうか?

 

山崎(専)

豊洲市場も築地魚河岸も手が空いて、何かしなければ行けないと思ってたんです。色々な情報を調べていた時に、知り合いに詳しい方がいたので、実行したのがきっかけです。

 

FC

調べ、実行し、成功する・・・本当に素晴らしいです!どのような苦労があったのでしょうか?

 

山崎(専)

仲買業と全く違いますからね。活動時間も違いますし、細かなやり取りはメールで!って言われたときに、えぇ?!電話・FAXじゃないの!?とか(笑)

沢山勉強して、聞きまくって、それでもまだまだ追いついて行けてないですよ。

 

FC

確かに、未知の世界ですもんね・・・。

築地魚河岸で、専務と店長が良いタッグを組んでいると社長がおっしゃっていましたが、お客様と接する時に気を付けていることはありますか?

 

山崎(専)

僕たちは仲買なので、魚には詳しく、専門家ではありますが、ここは一般のお客様が多いですからね、市場特有のプロ感は出さないようにしてます。先ほどの社長からの話しにもありましたが、親方は料理のプロなので、調理方法を教えてあげたりしてます。そうすると、「あの調理方法良かったよ~」とかお客様からのフィードバックもあるんです。

 

FC

ここ数年で、穴子に対する考えの変化などはありますか?

 

山崎(専)

正直、穴子に着目してくれるのって、年配の方が多いんです。若い方がSNSで穴子の発信に興味を持ってくれるかというと、正直難しいです。一度食べてくれれば、リピーターになって頂いたりするんですけどね。

 

しかし僕は、漁獲量が減っている今日でも、大量に収穫して大量に冷凍して、ってのは本質ではない思います。僕たちがしっかり伝えて行きたいです。

【店長提供写真】


今後の展望


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どうやって伝えるかが大切なポイントですね!

今後、挑戦したいことはありますか?

 

山崎(専)

沢山ありますよ。全部は言えないですが・・・。通販とかにも力を入れたいとは考えています。やはり、エンドユーザーが幸せになる事が大切だと思ってます。

 

FC

お二人にとって仲卸ってどんな職業ですか?

 

山崎(社)

子供のころから当たり前に見てきた世界で、当たり前のように入った世界なので、生活の一部ですね。先代が当たり前の様に行っていたお客さまへの接客を、私も大切にしているというシンプルなものです。

 

山崎(専)

率直に、楽しいです。毎日変化のある生き物を取り扱っている僕たちには、同じ日はないんです。それって、ワクワクしませんか?今ではクラファンや通販など、間口を広げることができるので、可能性は無限だと思っています!

 

FC

前向きに進むお二人のお話、胸に打たれました!これからも豊洲市場・築地魚河岸の両方で、私たちにHAPPYを分けてください!本日はありがとうございました!