日本の台所「豊洲市場」2018年築地から移転した豊洲市場には、水産約500社・青果約100社の仲卸会社が存在します。「良い仕入れ・良い業者」を紹介する本サイトでは、豊洲市場で熱い想いを持って働く会社様にインタビューを行っております。

 

第18弾は、飲食店の寿司屋に冷凍・生マグロを納める「大閣」の3代目代表、鈴木社長です。豊洲市場の中でもひと際目立つオレンジの看板はなんと福袋に入ってたジャンパーから!?築地時代より、多くの飲食店愛され、また店頭販売をしていたことで、一般の方のファンも根付いている大閣さんが、今の販売方針になった背景から、得意のマグロの種類まで語っていただきました!


今の販売スタイルになるまで


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本日はよろしくお願いいたします。

大閣さんは市場でどのような歴史があるのでしょうか?

 

鈴木社長(以下:鈴木)

よろしくお願いいたします。

昭和8年から続く仲卸で、私で3代目です。市場は「大善」さんから分散して「大」が付く会社の名前が多く、うちもその中の1つです。当時、祖父が「大萬」さんで修行していたのが始まりで、独立した時に、叔父の名前「角」という字を変形して「大閣」となりました。

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そうだったんですね!知らなかったです。それで言うと、この市場内でひと際目立つオレンジ色の会社カラーも何か意味があるんでしょうか?

 

鈴木

これは、いつかの年末に、たまたま買った福袋のジャンバーがオレンジで、私服で使い古したのを市場で来てたんですね。そうしたら段々と定着してきて、荷受人の方にも色が目だって目に付くので好評だったんです。(笑)

周りにオレンジカラーの会社が無かったのも理由で、豊洲移転をきっかけに全面的にオレンジ色を打ち出すようになりました。

 

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実は弊社の会社カラーも同じオレンジなので、大閣さんに来ると落ち着きます!

そんな大閣さん、築地時代から現在と同じ冷凍と生の両方取り扱ってたのでしょうか?

 

鈴木

いいえ、元々うちは生マグロだけ取り扱っていたんです。私が高校卒業して、他のマグロ屋に修行したのですが、その会社が冷凍マグロ専門で、勉強させていただいてました。修行が終わって大閣に戻ってから、始めて冷凍も取り扱うようになったんです。同じマグロでも冷凍とだと大きく違うんですよね。

 

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具体的にどんなところが違うのでしょうか?

 

鈴木

年間を通して、安定した価格で提供できるのが冷凍、価格の変動があるのが生の特徴でもありますが、それだけではありません。競りの仕方一つ取っても全く違います。冷凍を見分ける技術は特殊なので、一度修行させていただいたのはとても大きいですね。そして、冷凍の中にもインドマグロやメバチマグロがあって、種類別でも見分け方が異なるので、本当にが奥が深いです。

 

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社長の修業時代の経験が生と冷凍の両方を取り扱う大閣さんのスタイルになったのですね!

ちなみに、店前でマグロの柵やブツなど、細かいものを販売してますが、築地当時もそうだったんですか?

 

鈴木

家内がお店を手伝うようになって、たまたま柵やブツなどの細かいものを店前で出してみたんです。築地市場の時は観光客の方も沢山通る場所に店を構えていたこともあり、一般の方に大好評で、それが段々と定着してきました。

 

豊洲へ移転したら、築地の時の様に一般のお客様も来場しにくいので、思うようには売れないのではないかと思っていました。しかし、実際そんなこともなく、前を通りすがる方が足を止めて下さったり、常連様がご贔屓して下さったりと、思った以上に順調でした。

 

実際に自分たちがマグロを取り扱っていて思うのは、まだまだ食べれるところって沢山あるんです。でも他の仲卸会社は細かい販売をしていないので捨てちゃうんですよね。それが本当に勿体なくて。だからこそ、始めていて良かった、と思っています。


マグロの身塩梅


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奥様が始めたことが定着していったというのは凄いですね!

現在の取引先についてお教えいただけますか?

 

鈴木

はい、9割がお寿司屋の飲食店です。チェーン店、個人店とそれぞれ納めております。

以前「大人の週末」という雑誌で、『気軽に入れる美味しい寿司屋』という特集では、取引先が3件載っていました。背伸びをしなくても気軽に入れるお店で寿司を食べるっていうのは、自分のコンセプトにも合っているなぁと感じましたね。

 

時には納めている飲食店に足を運んで、食材をどのように扱ってるかとか、お客様の反応を見たりします。自分で見て、肌で感じて、もっとこんな質の物を提供した方が良いのかもな、と提案したりしてます。

 

FC

プロが提案してくれるのは嬉しいですね!そんな大閣さんが取り扱うマグロの特徴はどんなところにあるのでしょうか?

 

鈴木

最近はあまり聞かなくなりましたが、「身塩梅」を意識してます。

 

FC

「身塩梅」ですか!?知識不足ですみません、詳しくお教えください!

 

鈴木

なかなか古い言葉なんですが、私も修行先で覚えました。メキキをする際に水っぽくなく、ねっとり・しっとりしている身のことです。マグロは延縄漁(はえなわ)で取ったものがより身がねっとり・しっとりしてるんですよ。

 

生も冷凍も、こういった身をイメージしながら目利きをして取り揃えています。

食べて美味しいと言ってもらえるマグロ、そして何より自分が好きなものでもあるんですよね。

 

FC

それってとっても大切ですね!

お取引先が大閣さんのマグロを選んでいる理由ってどんなところにあるのでしょうか?

 

鈴木

やはり値段と質の「コストパフォーマンスの高さ」です。先ほどの、雑誌の『気軽に入れる美味しい寿司屋さん』の話もそうですが、先方が取り扱いたい価格帯でベストなものを提供することを大切にしています。私たちが得意としているしっとり・ねっとりしている見質のマグロは色持ちもいいので、寿司屋さんとしては取り扱いやすいと思います。

 

実際に、店頭販売しているマグロを購入していただいてから、お取引に始まったケースもあるんです。実際にご自身で食べて、試して頂いているので、どんなマグロが得意かというのも分かってくれている関係性からのスタートとなります。それは凄く嬉しいですね。


安定した供給をするために、選別するのが仲卸


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確かに、お問い合わせから取引までも早そうですね!

大閣さんは今後どんなことに力を入れて行かれるのでしょうか?

鈴木

そうですね、今回のコロナで、飲食店メインで納め先と取引をしていた我々は、大打撃でした。そうなると、今まで店頭販売していた時の様に、一般の方や量販店への方向性を変えていかなければならないと思うこともあります。とはいえ、昨年の動向を見てると、飲食店さんも頑張っていただいているお陰もあって、本当に支えられたんです。それを思うと、ご贔屓頂けるファンは今まで以上に大切にしていきたいですね。

 

FC

既存のお客様を大切にするのはもちろん、新たなビジネスが生まれる可能性もありそうですね!最後になりますが、大閣さんにとって「仲卸業」とはどんな職業ですか?

 

鈴木

仲卸業、そうですね。「選別する仕事」ですかね。自分たちが納めてる飲食店には、『こんなのが食べたい!』という気持ちで来店して下さるお客さんがいるので、その方たちの為にも、安定した供給はしていかなくてはならないですね。だからこそ、弊社にあるマグロは自分にとってもお客さんにとっても最高のもの選別しております。

競り場に大量の魚が並べられ、良いものを買って、お客さんに提供し、エンドユーザーが美味しく食べてくれる。そこが感じられるのが楽しい職業です!

 

FC

聞けば聞くほど奥が深いです!貴重なお話、ありがとうございました。