日本の台所「豊洲市場」2018年築地から移転した豊洲市場には、水産約500社・青果約100社の仲卸会社が存在します。「良い仕入れ・良い業者」を紹介する本サイトでは、豊洲市場で熱い想いを持って働く会社様にインタビューを行っております。

 

第19弾は、ご兄弟でマグロと鮮魚をそれぞれ担当している「山雄商事(やまゆうしょうじ)」のお二人です。創業当初から時代の変化に合わせて、色々なことに挑戦をし続けていた山雄さんは、【豊洲市場】という概念にとらわれず、常にお客様のニーズに応えられるため、進化をし続けているのが特徴。主に埼玉方面には配送ルートを持つため、お客様と直接やり取りをすることで、コミュニケーションを取っています。そんな山雄さんも当時はマグロだけを取り扱っていたとか!?現在のマグロ×鮮魚の販売方法になったのはなぜだったのか、赤裸々にお話頂きました!


市場の常識は通用しない


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本日はお二人揃ってのお話とのことで、ご調整頂き、ありがとうございます!山雄さんは創業何年の仲卸さんなんですか?

 

山雄様(以下:山雄)

こちらこそ、お願いします!当社は、昭和63年創業なので、現在34年目となります。父親から始まった仲卸で、当時はマグロを納めていました。

 

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当時のお客様はどのような業種業態だったんですか?

 

山雄

(社長)

主に魚屋さんとお寿司屋さんでした。配送なども全くなかったので、店頭に買いに来て頂いて、父親が接客している背中を見て育ちました。

私自身が市場に入ったのは22歳なので、30年以上になりますね、早いもんです。

 

(専務)

自分はサラリーマンをしてましたが、22歳ごろ市場の世界に入りました。ちょうどバブルの時で、お寿司屋さんが沢山あった時でしたね。

 

FC

そうだったんですね。当時はどのようにお客様を開拓されていたんですか?

 

山雄

(社長)

もちろん、父親の相対ありきで付いてくださっていたお客様は沢山いました。しかし、徐々に引退していくオーナー様もいたため、新規の開拓は同時進行で行っていかなくてはいけなかったんです。当時、ゴルフ場が今よりずっと盛り上がってる時代で、DMを送って直接取引が始まったり、弟は飛び込みで営業に回ってくれたりしてたんですよ!

(専務)

そうそう、行ってたよね。サラリーマン時代の教訓がここで役に立ちました(笑)主に埼玉の地元地域を当たっていて、素敵なお店だな~、って思ったら「地域の飲食店を盛り上げたい!」という旨を説明しながら話をしに行ってました。地元の人間ってのもあったので、皆さん温かく受け入れてくれましたよ。それでも、10件話し込んで、実際にサンプルまで出したり、取引が始まるのはその中の1件くらいでしたけどね。

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その当時から、DMを送ったり、積極的に外に出ていらっしゃったのは凄いですね!

 

山雄

最近は少なくなってきましたが、良いも悪いも仲卸って職人なので、営業が苦手な人が多いんです。市場の常識ってあって、自分が提供する品物が“絶対”で、クレームなんて受け付けない!なんて方もいらっしゃったかと思います。もちろんその自信は必ず必要ですが、私達はもっとお客様の声を聴きたかったんです。結局市場に居ない方との付き合いになりますし、話し込むことで、Aのお店とBのお店の好みのマグロ・求める質の異なりを知っていくんです。相手が何が必要で、どんなことに困ってるか、しっかり話をしながら取引を始めたかったんです。


毎年のモットー


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常にユーザーファーストということですね。お客様も相談がしやすい環境ですね。

ところで、今はお二人がマグロと鮮魚をそれぞれ見ていらっしゃるとのことでしたが、いつからそのスタイルになられたのですか?

 

山雄

そうですね、大体25年前でしょうか。私たちの規模の会社でマグロと鮮魚を両方取り扱っているのは、豊洲市場の中でも珍しいと思います。

きっかけは、お客さんの話を聞いていたら始まった商売スタイルだったんです。マグロって仕入れを中々変えなかったりと、動きがないんですよね。そうすると新規のお客様でも「マグロじゃない商品から始めたい」や、既存のお客様は「マグロもあるなら他の魚もあるんじゃない~?」っといった一言から始まりましたね(笑)

最初は導入しやすい貝類や海老などから始まり、その後徐々に広めていったんです。どちらも中途半端になるのは嫌だったので、兄がマグロ・弟が鮮魚の専門になって、2つの柱で行っていくことにしました。お互いの取り扱い商品のフィールドが違うことで、それぞれの意見を取り入れようとしますし、成長できていますね。

 

FC

確かに、いつもお二人の仲の良さがとっても伝わってきます!

現在はどのような所に納めていらっしゃるのですか?

 

山雄

ありがとうございます。

現在はほぼ飲食店様です。中でもお寿司屋や割烹屋・高級居酒屋など、客単価で言うと5千円~1万円くらいのお店が多いですね。僕たちの地元が埼玉なので、埼玉方面への配送も行ってます。通り道でもある池袋や赤羽にも運んでいるんです。当時飛び込みで営業していたのが地元界隈でしたので、そこから徐々に広まっていきました。

 

FC

現在、仕入れを探している方や、見直しを検討している飲食店さんが山雄さんにお問い合わせする際、どんなことに着目されるんですか?

 

山雄

冷凍マグロの場合は「どのように取り扱うか」を重視しています。保管環境であればストッカーを持ってるのか、そして解凍方法も聞きます。そこが分かってないと、自分たちがベストと思っているものでも、先方の期待外れになってしましますからね。さらに、今まで使ってたことろで、どんな事が嫌で取引を変えたのかを最初に聞いていきます。

 

FC

最初に嫌だったことを聞けば、先方が欲しているもの、そして山雄さんが出来ることが分かりますもんね!勉強になります。

 

山雄

毎年必ずモットーにしてるのは「今年はクレーム0にする」ということです。そう意気込んでも、実際は難しいんですけどね・・・。どうしても魚は生き物なので、予想通りにいかないこともあります。しかし、フィードバックをしっかり聞くことで、次に繋げていく気持ちでいます。


メキキとはマッチングをすること


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確かにいつも外でお会いする時は車に積んでいらっしゃいますもんね!時代に合わせて色々なことに挑戦されている山雄さんですが、今何か考えられてることはあるんですか?

 

山雄

正直チャレンジしたいことは沢山あります。常に面白いことをしたいと思ってるんです。

今まさに挑戦してるのは、鮮魚を「津本式」で神経締めし、鮮度を保つことです。知り合いの仲卸さんから学んで、初めて1・2年になります。少し手間を加えることで、値段などではなく、質で選んでくださるお店が多くなってきてるんです。魚にも付加価値を付けていかないといけないですよね。

FC

山雄のお二人にとって、「メキキ」とはなんですか?

 

山雄

今後はAIの技術が発展してきて、魚のレベルを見極めるという意味での『メキキ』の概念は変わってくるかもしれないです。しかし、どちらかというと、お客さんと我々が持っている商品の【マッチング】だと思ってます。極端に言うと、赤色が欲しいお店には赤色を、青色が欲しいお店には青色の物を、それも見分ける力ですね。自分がこれだ!と思うものでも、そのお店では求めていないものかもしれませんからね。常にお客様に寄り添った商売をしていきたいです。

 

FC

山雄さんの挑戦し続ける様と、ユーザーファーストな面が120%で伝わりました。今後の挑戦がどのようなものなのか、後でこっそり教えてくださいね!貴重なお話ありがとうございました。