日本の台所「豊洲市場」2018年築地から移転した豊洲市場には、水産約500社・青果約100社の仲卸会社が存在します。「良い仕入れ・良い業者」を紹介する本サイトでは、豊洲市場で熱い想いを持って働く会社様にインタビューを行っております。

 

第11弾は、冷凍のインドマグロ・本マグロを取り扱う「有限会社中茂」、昭和55年創設でお祖父様から受け継ぐ3代目「中茂」の田中孝謹社長です。先代から冷凍マグロを取り扱っており、中でも本マグロやインドマグロをメインとして販売しています。この品種にこだわる背景や、築地から豊洲に移った際に大きく変わった事、など語って頂きました!


メールじゃマグロは伝わらない


FC

社長の歴史・会社の概要を教えてください。

 

田中氏(以下:田中)

祖父が個人でマグロ屋をしてまして、昭和55年に法人化し、現在私で3代目となります。私自身は大学卒業と同時に、一般企業に就職をするか、代々の仲卸業に入るか迷っていたんですが、物を「製造」するより、「扱う」方が自分に合ってるという漠然とした思いや、様々なタイミングが重なり、この道に進むことに決めました。

FC

この業界に入った当初、大変だったことはありましたか?

 

田中

最初の1年は学生の傍ら、仲卸業をしていたので、金曜日だけ必修に行ったりと、かなりハードでした(笑)

後は新規のお客様の獲得も苦労しました。祖父の代のお客様は、祖父と同年代の方が多く、引退する方も多くいました。バブルが弾けた後は、新規のお客さんもなかなか来ず、とても大変でしたね。その時は外回りで営業していたりもしたんです。都内が難しければ少し遠くまで行って回ったりもしていましたね・・・。

 

FC

それは大変ですよね・・・現在の取引先はどのような所が多いのですか?

 

田中

個人の飲食店や複数店舗を経営している取引先も多いです。中でもお寿司屋さんや懐石料理屋さんが多いですね。場所も豊洲界隈や関東はもちろん、北陸の長野などもあります。

FC

お客様はどのような方法で中茂さんにお問い合わせするのが良いのでしょうか?

 

田中

電話やFAXで事前に注文を承っております。時代の変化に応じてLINEでもやり取りは可能です。画像などで共有できるのはとっても助かってますね。しかし、マグロって対面でお話させて頂かないと伝わらない事が多くて、身の質や使いたい部位によっての料金提示はメールなどでは伝わりきらないんですよね。そこで誤解がうまれるのは一番避けたいですからね。ですので、興味を持って頂いたお客様には、もう一度自分から足を運んだりして、出来るだけ対面になる様に努めています。限られた時間や範囲にはなりますが、飲食店さんは安心していただけるポイントです。

 

FC

LINEでのやり取りは早くていいですね!取り扱い商品について詳しく聞かせてください。

 

田中

冷凍物のマグロですが、中でも本マグロとインドマグロを扱っています。この2つに絞った理由として、メバチマグロは下身の腹一丁にシミが出るんです。なので3/4で勝負をつけ、残りの1/4は安価での販売が必要です。その分、現在扱っているマグロは4丁分しっかりと使えるということですね。当時からお寿司屋さん系統が多かったので、お腹が厚いのもとしてメバチよりインド、インドより本マグロとお客さんにオススメしている間に絞れて行った形になります。インドマグロの中でも産地によってかなり違いはあります。形やお腹のふくらみによって脂の幅が出なかったりするんです。私たちの世代は良いときの魚を知ってますからね、海が変わったことで、魚も少しずつ変わっています。

 


マグロじゃなくて自分を売る


FC

マグロの仲卸が数多くあるこの豊洲の中で、お客さんが「中茂」さんを選ぶメリットってなんですか?

 

田中

そうですね、「対応の早さ」は大きいかと思います。大きな企業さんだと、実際にセリ場に立たない方が販売したりすることもありますが、我々は大人数でやっていないからこそ、伝言ゲームになることなく、価格や魚の質・求めるもの全てをダイレクトに聞き、伝えることができます。そうすることでお客さんもセリの状況を想像することが出来ますからね。

FC

では、田中社長がそのセリで気を付けていらっしゃることはなんですか?

 

田中

この魚はこのお客さん向きだろうなと、お客さんを思い浮かべながら見ることです。もちろんそこに価格が入ってきますよね。熱くなりすぎて、価格問わずに購入してしまうシチュエーションを見たりしますが、私は相場を把握し、いかに冷静になって判断するかを大切にしています。明日になればもう少し安い値段で買えるとか、500円でも千円でも安く出せるかもしれない、とジャッジしてます。もちろんそれで買えなくて焦る事もあるんですけどね(笑)目の前に沢山並んでいる魚をどのお客さんに向けたものなのか、求めているものを自分が選べるかですね。最初はこれが本当に難しかったですし、今でも新規のお客さんとその双方がピッタリ合うことは簡単ではないんです。私も沢山ヒアリングし、フィードバック頂くことでその誤差を最小限に無くすよう、努めています。新規で買っていただくということすらも難しいことですからね・・・。一度お話をして興味を持っていただく事がとても大事だと思っています。

 

FC

興味を持ってもらう為に具体的にされていることはありますか?

 

田中

父や先輩にもよく言われていましたが、「マグロじゃなくて自分を売った方が良い」というのは意識しています。マグロ以外の話から入り、私と会話する事から信頼を築かせていきたいんです。

 


「ありがとう」のフィードバック


FC

そのやり取りが「田中社長が選ぶマグロが欲しい」となるわけですね!この道で感じるやりがいはなんですか?

 

田中

製品などと比べると魚を買うのはギャンブル性があり、自分が思っているより良い物だった時ですね。それを提供でき、お客さんからの「ありがとう」のフィードバックはとっても嬉しいです。マグロは特に大きいので、外した時はその分落ち込みます・・・。冷凍物なのでそこまで外と中のギャップはないですが、凍結が悪かったりすると、中の状態や色目が良くないこともあります。それが中までしっかり行き通っているだろうな、と魚体やお腹の形、取れた時期までもを逆算して目利きし、思い描いていたものと合致するときは、やりがいを感じます。

 

FC

ど素人の質問でお恥ずかしいのですが・・・冷凍マグロの強みってなんですか?

 

田中

例えば、近海で取れる天然の大間のマグロなどは皆さん新鮮だなってイメージですよね。しかし、実は冷凍のマグロが1番新鮮なんです。というのも、取れた新鮮な状態の時に血抜きをして、瞬時に凍らせます。その後塩水のようなプールに潜らせ、ピキピキッとマグロの身体に膜が張ります。そうする事によってマグロ真ん丸の状態で‐70度の環境などで3~4年寝かしておくことができるんです。その後荷主さんが出荷調整をして相場が一定して崩れない、ということです。

FC

飲食店さんが中茂さんで注文する際の最低注文の量などはございますか?

 

田中

お店によって値段も量も様々で、大量にご注文される方もいますし、当社は小ロットでも対応しておりますので、キロ単位であればご注文可能です。出来るだけ各お店に合わせた方法で提供したいと思っています。

 

FC

対応していただけるのはとても安心ですね!築地から豊洲に変わった事で感じる変化はなんですか?

 

田中

我々の様な冷凍物を扱うものとしては「設備」や「衛生面」ですね。築地で風が強い日や夏は冷凍のマグロを4等分すると溶けちゃって本当に大変でした。いっそいで磨いて中に入れて、大忙しでしたね(笑)今は空調管理もあるので、溶けにくく、魚にも人間にも優しい環境ですね。お客さんからすると、来づらくなってしまったんですけどね。


仲卸の存在意義


FC

今後も守りたいもの、夢はありますか?

 

田中

マグロが減っている事実がある中で、ここ豊洲で多くのマグロ屋が立ち並び、セリが開催されているのは、流通の中の一環を担っていると思っています。その中で買いに来られる方に対して欲しい物を提供できるような状態にはしておきたいです。周りのマグロ屋さんはある種、競合相手ですが、この文化を大切に守り続けて行きたいと思っています。我々がいるからこそ、安心して魚を食べれるという環境にしたいですし、仲卸業をその様なポジションにしていきたいです。

 

FC

私も田中社長のお話聞いて、魚を食べる時に仲卸さんの顔が想い浮かぶ様になりそうです!貴重なお話、ありがとうございます!

 

【会社情報】

会社名:有限会社 中茂

住所:〒135-0061 東京都江東区豊洲6-5-1 ハ‐82

電話番号:03-6633-4646

公式サイト:https://www.toyosu-nakamo.com/

【取り扱い商品】

■冷凍マグロ

※商品の詳細は店舗にご来店・お問い合わせください。